マンション火災の生き残り「あの事件の子」の苦悩と成長を描く『ユ・ウォン』
彼女を苦しめたのは、善意。
百合濃度
『ユ・ウォン』
著/ぺク・オニュ 訳/吉原育子
装画/あおのこ
出版/祥伝社
ユ・ウォンは有名な女子高生だった。十二年前のマンション火災事故の奇跡の生存者として。
ユ・ウォンの姉は、幼い妹を十一階から投げ落とした後、帰らぬ人となった。
地上で彼女を受け止めたおじさんは、足に重い障害を負った。
あれから十二年。
姉は神格化され、「英雄」のおじさんは家をたびたび訪ねてきてはお金を無心していく。
そんななか、ユ・ウォンは同じ高校に通うスヒョンと知り合う…。
・「いい子」でいるのが辛い
・家族に苦手意識がある
・自分の生きている世界を好きになりたい
生き残ったことへの罪悪感、葛藤…数々の痛みを乗り越えていく少女の物語。
『ユ・ウォン』はこんな人にオススメ
「いい子」でいるのが辛い
姉がマンションから落とさなければ、
おじさんが受け止めてくれなければ、
今、ユ・ウォンはいません。
だからこそ、姉やおじさんに感謝し、
すこやかに「いい子」に成長すべきという足枷がずっとユ・ウォンについてまわります。
その足枷をつけたまま、出会ったのは自分と正反対のスヒョンで…。
家族に苦手意識がある
ユ・ウォンもスヒョンも、家族の誰かに対して
複雑な思いを抱いています。
家族だからこんなことを思ってはいけない
家族だから大切で好きでいなければならない
そんな呪いを感じたことのある方は、
ふたりが折り合いをつけていく姿に勇気づけられたり、安心できるかもしれません。
自分の生きている世界を好きになりたい
ユ・ウォンは事故から十二年たった今も
「あの事件の子」という目で見られています。
自分はみんなを知らないのに、みんなが自分を知っている。
どれだけ居心地が悪くても生きていかなきゃいけなくて…。
ぜひ彼女の来し方行く末を見届けてください。
『ユ・ウォン』感想&好きなポイント
なんといってもラストシーンの心地よさが好きです。
じんわりと広がる読後感がまた良い…。
家族に少なからずネガティブな思いを抱いたことのある方には救いになる作品だと思います。
私はすこし自分を認めてもらえたようで楽になりました。
ユ・ウォンとスヒョンの関係も唯一無二で
この境遇にいるふたりだからこそのものだと感じました。
(ふんわりとしか言えないのでぜひ読んでみてください…!)
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