激しく美しかったあなたはもういない『西洋菓子店プティ・フール』
あの頃は、ずっと一緒にいるのだと信じていた。
百合濃度
『西洋菓子店プティ・フール』
著/千早 茜(ちはやあかね)
装画/西 淑
出版/文春文庫
フランス菓子作りを修業したパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く。女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連たち――
店を訪れる人々が抱えるさまざまな事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。
・ドロッとした感情が好き
・洋菓子が好き
・お仕事小説が好き
鮮やかで甘やかな思い出を胸にしまって。
『西洋菓子店プティ・フール』はこんな人にオススメ
ドロッとした感情が好き
連作短編集のうち、ひとつだけが百合です。
そのひとつが、チョコレートブラウニーのように濃厚で、
赤い実のように酸っぱくて、鮮烈です。
束縛、憧れ、諦め、あらがえないほどの高揚感、
ただただ甘いだけでは済ませられない複雑な感情がつまっています。
洋菓子が好き
お話の中にケーキやシュークリームがふんだんに出てきます。
おいしいお茶と甘いお菓子を用意して読むのも雰囲気が出てオススメです。
心情的に胸やけするようなシーンもありますが、お菓子の描写はどれも美味しそうです。
お仕事小説が好き
仕事をするうえでの「こだわり」を大事にしている登場人物が出てきます。
創業四十年の洋菓子店を営む祖父の迷いのない動き、
自分の手で作ったお菓子がお店に並ぶまでの努力と苦労、
はたまたネイリストの女の子の施術や接客のていねいさなどが描かれます。
『西洋菓子店プティ・フール』感想、好きなポイント
百合が出てくるとは知らずに読み始めたので、
いきなり濃厚な百合を差し出されてびっくりしちゃいました…。
自分の中で処理しきれない感情、傍から見たら何かがおかしい関係、
そんな危うさがふんだんに散りばめられてて、重めのため息が出ました。良くて。
巨大感情とはまた違う、でもなんて表現したらいいのかわからない、
本当に複雑な、考え抜かれて丁寧に作られたお菓子のような、そんな百合でした。好きです。
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