病気と無縁のやさしいユートピア…それはしあわせ?『ハーモニー』

やさしさの真綿に締められる。
百合濃度
『ハーモニー』
著/伊藤計劃(いとう けいかく)
イラスト/シライシユウコ
出版/早川書房
21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、 人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。病気がほぼ放逐され、 見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。 そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した――
それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、 ただひとり死んだはすの少女の影を見る――
・痛いのがニガテ
・人とちょっとちがうことに憧れる
・ミステリーが好き

私は無価値であることを証明したい。
『ハーモニー』はこんな人にオススメ
痛いのがニガテ
医療分子の発達により、病気やケガがほぼ無くなった世界。
健康を害す恐れのある、お酒やタバコなんてもってのほか。
自分のカラダが傷ついたり、苦しむことは、この世界にはほぼありません。
大人になったらみんな「WatchMe」を体に入れて、自分のカラダを管理してもらうから。
だからそう、痛いのがニガテな人にとっては、まさに「ユートピア」。
…本当に?
人とちょっとちがうことに憧れる
この作品の主要人物は三人の女の子です。
やさしい世界を憎むミァハ。
他人に興味がないトァン。
ふたりの傍で話を聞くキアン。
自分のカラダは自分のもの。
大人になって「WatchMe」を入れて管理されるなんて絶対に嫌。
世界には愛情があふれていて、一人ひとりが大切なリソース? 自分には関係ない。
そんなことを考えている女の子なんて、まず居ません。
カリスマ的存在であるミァハに誘われて、トァンもキアンもある行動に出ます。
ミステリーが好き
ディストピアSFの世界に読者がなじんできた頃、
突然ミステリーの渦に引きずり込まれます。
すこしずつ真相に近づいていく彼女、
最後の章で明かされる真実。
読み切ったときの感情を味わってほしい。

『ハーモニー』感想、好きなポイント
パラッとページをめくったときの印象は「むずかしそう」でした。
そのむずかしさは、自分のいる世界を改めて見直すきっかけになりました。
やさしい世界ってなんだろう。
健康でいたいと思うけど、病気やケガがほぼない世界を望んではいない。
それはこの『ハーモニー』の世界のように、
体や心を害す可能性のあるモノが排除されてる世界なんてつまらないと思うから。
『ハーモニー』補足情報
コミック、映画なども作られています。
コミカライズ

アニメ映画

こちらを読むとより楽しめるかも
ディストピアSFとして有名な小説があります。(※百合ではないです)

この『一九八四年』は本作『ハーモニー』以外にも、
さまざまな作品にオマージュや小ネタとして出てくることが多いです。
そして読む前と読んだ後では世界がちがって見える作品です。
私は読んで良かったと思っています。思考の幅が広がりました。

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