吉原に生きる女の覚悟の物語『花宵道中』
自分の心に向き合う女の子たちの覚悟の物語。
百合濃度
『花宵道中』
著/宮木あや子
装画/さやか
出版/新潮文庫
初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、
思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、
弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、
美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……。
儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
・恋の悲喜こもごもが読みたい
・歴史・時代小説初心者
・季節を感じられる文が好き
※吉原を舞台にした遊女のお話です。男性との行為の描写が多く描かれます。
『花宵道中』はこんな人にオススメ
恋の悲喜こもごもが読みたい
女の子たちは憧れます。
きらびやかなお着物に、
偶然であったあのひとに、
茶屋で見かける恋人たちに。
憧れを自分の手にできることが、ないと分かっていても…。
歴史・時代小説初心者
歴史にうとい、時代物はむずかしそう…と思っている方も大丈夫、
このお話に戦や将軍のあれこれは出てきません。
吉原で生きる女の子たちの生活が描かれているからです。
髪型やお着物の名前についても、さりげなく解説を混ぜてくれるので分かりやすいです。
季節を感じられる文が好き
遊女たちの暮らす側にはどぶ川が流れており、
身寄りのない女性の亡骸が投げ込まれることもあります。
そんな凄惨な場所にありながら、木々の青さ、夏場のうちわ、冬の朝方の空気の冷たさなど、
四季を感じさせる描写が美しいです。
どぶ川と対比のように描かれる自然の美しさに苦しくなることもしばしば…。
『花宵道中』感想、好きなポイント
この物語にどうしようもなく心惹かれるのは、それが覚悟の物語だからでした。
自分の心としっかり向き合った結果を生きる彼女たちがまぶしくて…。
百合読書的なお話をしますと、これは連作になっており、
毎回、主軸となる女の子が変わります。
男性との絡みが圧倒的に多く、女の子同士の直接的な描写があるのはひとつだけです。
そのお話が濃密で、彼女たちにとっては一生忘れることのない日になったんだろうな、というのが読んでて伝わってきてとても好きです…。
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